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民間の医療保険は加入不要?公的保障と日本社会
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「医療保険は入っておくべき? それとも不要?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
医療保険に入るべきか考えるためには、医療保険の内容以外にも知っておいたほうがよいことがあります。例えば、病気やケガのときはいくらかかるのか、健康保険など公的な保障だけでどこまでカバーできるのかなどです。この記事では民間の医療保険と公的な健康保険の保障内容を詳しく解説します。
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★この記事は約5分で読めます。
- 8割以上の日本人が民間の生命保険、生命共済に加入している。
- 公的保障だけでは病気の治療費を補いきれないケースがある。
- 民間の医療保険は家族と相談して検討しよう。
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8割以上が民間の生命保険に加入している
生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査(2019年度)」によると、生命保険や生命共済の加入率は82.1%でした。また、生命保険のうち「疾病入院給付金」が支払われる保険の加入率は73.1%となっています。
日本では、多くの方が生命保険や医療保険に加入して「もしも」の事態に備えていることがわかります。
同調査では、病気やケガに対して不安を感じている方が約9割、現状ではまだ準備が不十分だと感じている方が約5割、今後新たに病気やケガの経済的な備えを準備したいと答えた方が6割以上という結果も出ています。
もしものことを考えるとどうしても心配で、医療保険や貯金などを充実させて安心したいと考える方は多いようです。
ただ、なかには「健康保険でまかなえるから民間の医療保険はいらない」と、あえて加入しないことを選ぶ方もいます。本当に、健康保険だけで足りるのでしょうか?
高額になりがちな「がん」の治療費
今まで健康に生きてきた方にとって、病気やケガのときにいくらかかるのか、なかなか想像しにくいかもしれません。ここでは、日本人の2人に1人が一生涯のうちに経験すると言われている「がん」の治療費について見ていきましょう。がんは、日本人の死因1位の病気でもあります。
厚生労働省の「医療給付実態調査(2019年度)」によれば、がん(悪性新生物)の1日あたりの入院医療費は平均で約2万円、平均入院日数は約19日となっています。1回の入院で2万円×19日=38万円ほどかかる計算です。
もちろん、がんの種類や進行度(ステージ)などによっても金額は大きく変わります。
近年は一部のがんの治療に使う「陽子線治療」や「重粒子線治療」といった最新技術が、先進医療として認められています。これらは、一度受けるだけでも300万円近い金額がかかる高額な治療です。しかも、健康保険の対象外のため全額が自己負担になります。
さらに、これらの治療費以外にも、以下のような費用もかかる可能性があります。
- 入院・通院するときや家族がお見舞いに来るときの「交通費」
- 個室に入院したときの「差額ベッド代」
- パジャマなどの「衣類代」や「日用品費」
- 入院中の「食事代」
- 診断書の作成費用
- お見舞いでもらった品のお返し など
1つ1つはそこまで大きな費用でなくても、いくつも重なるとどうしても家計を圧迫してしまいがちです。さらに、入院中に働けないことで収入が下がる場合は、さらにダメージが大きくなります。
公的保障だけでは治療費を補いきれないケースがある
公的な医療保険である「健康保険」は、医療費の負担を抑えるのに役立ちます。窓口で保険証を出せば「3割負担」などで医療が受けられることはよく知られていますが、それだけではありません。
医療費の自己負担が一定額を超えたとき、その超えた分を国が支給してくれる「高額療養費」という制度があります。
この「一定額」は年齢や年収などによって異なりますが、例えば、69歳未満で年収300万円ほどの方なら月57,600円が上限と決められています。もし医療費が100万円かかったとしても、自分が払うのはこの金額までで済みます。
非常に強力な制度ですので「これがあるなら、わざわざ民間の医療保険に入る必要はない」という意見も一理あります。
ただ、「差額ベッド代」や「先進医療にかかる費用」などはこの制度の対象外ですので要注意です。また、いくら月数万円までに医療費が抑えられるといっても、治療が長引いて何ヶ月にもわたる場合には積み重なって大きな負担になることもあります。
下記の方たちは、健康保険だけに頼るより民間の医療保険にも加入しておいたほうが安心かもしれません。
- 高額な先進医療も積極的に受けたい方
- 入院するなら大部屋ではなく個室を希望する方
- 貯金があまりなく突然の高額医療費に備えたい方
- 自営業など仕事を休むとダイレクトに収入に響く方
これらに当てはまる方は、民間の医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。
家族と相談して保険を考えよう
民間の医療保険に加入すべきかどうかは、収入や貯金額、家族構成などによっても変わってきます。
保険は入りすぎると保険料の負担が重くなりますし、入らなさすぎるともしものときに困ります。バランスが難しいのですが、いつか後悔することがないよう「なんとなく周りがこうしてるから」といった決め方ではなく、面倒でも一度は熟考してから判断したいですね。
この記事の執筆協力
- 執筆者名
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馬場愛梨
- 執筆者プロフィール
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ばばえりFP事務所 代表。関西学院大学商学部卒業後、銀行にてクレジットカードやカードローン、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業に従事。その後、保険や不動産などお金にまつわる複数の業界での勤務を経て、独立。自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。保有資格:AFP、証券外務員一種、秘書検定1級など
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