- コラムタイトル
-
出産一時金、出産手当金の違いって?産後にもらえるお金と支給条件
- リード
-
妊娠·出産は、人生最大ともいえる大きなライフイベントです。愛おしいわが子との対面を待ち望む一方で、多くのパパママが「お金」に関する悩みや不安を抱えています。分娩にかかる費用はもちろん、産前·産後休業、育児休業を取得した場合の収入面も気になるところですよね。今回は、そんな出産·分娩にまつわるお金について詳しく解説。“かかるお金”と“もらえるお金”をまるっとチェックしていきましょう!
- コラムサマリ
-この記事のまとめ
1.出産にはいくらかかる?平均費用や内訳
1-1.正常分娩分の平均的な出産費用
1-2.東京都は平均費用よりも10万円以上高い!
1-2-1. <先輩ママのリアルボイス:休日深夜料金で予想外の出費に!>
1-2-2.<先輩ママのリアルボイス:都内病院の個室料金はかなり高額>
2.知らなきゃ損!出産後にもらえるお金って?
3. 出産育児一時金
3-1. 出産育児一時金の対象や金額、申請方法は?
4. 出産手当金
4-1. 出産手当金の対象や金額、申請方法は?
4-2. <先輩ママのリアルボイス:育児休業給付金のおかげで安心して出産できた!>
5. 育児休業給付
5-1. 育児休業給付金の対象や金額、申請方法は?
5-2.
6. プラスのサポートを受けられるかも!自治体独自の助成も要チェック
6-1. 東京都港区の出産費用助成
6-2. 熊本県産山村の出産祝金
7. もらい損ねを防ぐため、事前にしっかりリサーチしておこう!
- 本文
-
出産にはいくらかかる?
平均費用や内訳 ドキドキと不安、そしてわが子に会えるワクワクが入り混じる出産前。不安なく過ごすためにも、事前に出産にかかる費用を確認しておきましょう。
正常分娩分の平均的な出産費用
公益社団法人「国民健康保険中央会」によると、正常分娩時の平均入院日数(平成28年度)は6日間。全国平均費用·内訳は以下のとおりです。
<妊婦合計負担額、項目ごとの平均値(病院、診療所、助産所の合計)>
入院料 112,726
室料差額 16,580
分娩料 254,180
新生児管理保育料 50,621
検査·薬剤料 13,124
処置·手当料 14,563
産科医療補償制度 15,881
その他 28,085
=合計 505,759円
上記は、あくまで平均費用。分娩施設の種類、出産方法や入院日数、ママや赤ちゃんの状態などによって金額は大きく変化します。深夜料金や高額な個室使用料がかかる産院もあるため、産院を決める前に問い合わせておくと安心です。
東京都は平均費用よりも10万円以上高い!
出産にかかる費用は、都道府県によっても大きく変動します。例えば、土地や人件費の高さ、医師不足が指摘される東京都で出産した場合の平均費用は621,814円。なんと全国平均を116,055円も上回ってしまうのです。その一方で鳥取県で出産した場合の平均費用は398,130円と、全国平均を大きく下回っています。
<先輩ママのリアルボイス:休日深夜料金で予想外の出費に!>
◇ A.Oさん(看護師/30代)
平日昼に無痛分娩を予定していたのですが、予定日よりも早く陣痛が始まったため、休日深夜の分娩に切り替えました。お産が長引いたこともあり、想定金額より8万円プラスに。なにかとお金が必要な出産前後、予定外の出費はかなり痛手でした。
<先輩ママのリアルボイス:都内病院の個室料金はかなり高額>
◇ N.Aさん(20代/自営業)
家の近くにある、都内の総合病院で分娩することに。入院の詳しい説明を受けるタイミング(妊娠後期)で、個室料金が30,000~50,000円/日と知って驚愕しました。都内の病院は室料が高いと聞いていましたが、まさかここまでとは! 出血量が多かったことによる入院延長も重なり、合計費用は100万円超えでした……。
知らなきゃ損!出産後にもらえるお金って?
ご紹介したとおり、出産時には全国平均で505,759円の費用が発生します。予想以上に高額な費用を目の当たりにして、「我が家は大丈夫かな」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、出産費用のすべてを自己負担するわけではないのでご安心を。日本には、出産前後に支給される各種手当金が用意されています。支給される金額や流れは、ママが加入している健康保険や就業状況(予定)によって大きく異なります。いざ申請するときに慌てないよう、助成金や給付金の内容、手続きについては出産前にチェックしておくと安心です。
出産育児一時金
妊娠4ヶ月以上で出産したとき、すべてのママに一児につき42万円の「出産育児一時金」が支給されます。仮に全国平均と同じ505,759円の分娩費用がかかったとしても、自己負担額(手出し)は約8万円で済むのです。
出産育児一時金の対象や金額、申請方法は?
<対象>
- 健康保険や国民健康保険に加入している、もしくは加入者の配偶者や扶養家族であること
- 妊娠4カ月(85日)以上の出産であること
<金額(計算方法)>
一児につき42万円
双子や三つ子といった多胎児を出産した場合には、胎児数分だけ支給(42万円×〇人分)されます。
<申請方法(以下のいずれか)>
- 直接支払制度(各健康保険協会から出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組み)
- 受取代理制度(条件を満たす小規模施設での出産時に、医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る仕組み)
- 事後申請(病院窓口で出産費用を支払った後、各健康保険協会に申請のうえで出産育児一時金を受け取る仕組み)
窓口での負担軽減のため、近年は「直接支払制度」の利用が多くなっていますが、小規模施設においては受取代理制度が適用されるケースも。いずれの制度においても、出産費用が42万円に満たなかった場合には差額分を受け取れます。
<申請期日>
出産日の翌日から2年以内
<給付時期>
直接支払制度や受取代理制度を利用した場合には、入院費用の支払い時にその場で42万円が差し引かれます。事後申請の場合は医療機関からの請求到着後、おおよそ出産後2~3ヶ月後となります。
出産手当金
産休中の働けない期間の生活保障を目的とする「出産手当金」。就労中かつ勤務先の健康保険に加入しているママを対象にした補助制度で、正社員はもちろんパートやアルバイトの場合でも、勤務先の健康保険に加入していれば支給対象となります。支給対象の条件が細かく定められているため、休職·退職前にしっかりチェックしておきましょう。
出産手当金の対象や金額、申請方法は?
<対象>
- 育児休業中であり、収入がないこと
- 勤務先の健康保険の加入者であること
<金額(計算方法)>
標準報酬月額(過去12ヵ月の平均給与)を基準に計算された日給の「3分の2」相当を、産前42日+産後56日(合計98日分)受け取れます。なお、多胎児を妊娠している場合は対象日数が増え、産前98日+産後56日(合計154日分)となります。
<申請方法>
①産休に入る前に、勤務先から「健康保険出産手当金支給申請書」を受け取る
②産院にて出産にまつわる情報など、必要事項を記入してもらう
③勤務先に送付し、申請を依頼する
<申請期日>
「出産のために労務に就かなかった日」ごとに、該当日の翌日から2年間
<給付時期>
申請後、平均1~2ヶ月後
<注意ポイント>
産後に働くことを原則条件としていますが、妊娠中のトラブルや産後の体調不良によって退職となった場合でも、以下の条件を満たすと出産手当金の支給を受けられます。
·被保険者資格の喪失日の前日(退職日)までに、継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること
·資格喪失時に出産手当金を受けている、もしくは受ける条件を満たしていること
<先輩ママのリアルボイス:育児休業給付金のおかげで安心して出産できた!>
◇ S.Nさん(30代/税理士)
「標準報酬月額は約35万円だったので、日給は35万円÷30日=11,666円。1日あたりの受給額(日給の三分の二)は7,777円となり、98日分で762,146円を受け取れました。住宅ローンの返済や上の子の教育費などお金の心配もありましたが、育児休業給付金のおかげで安心して休むことができました」
育児休業給付金
育児休業取得後、職場復帰を予定しているパパママのための補助制度「育児休業給付」。産後休業と育児休業を取得した女性はもちろん、育児休業を取得する男性も給付対象となります。2022年に改正された「新育児·介護休業法」をきっかけに、今後さらなる男性育休の取得促進が期待されています。
育児休業給付金の対象や金額、申請方法は?
<対象>
·無期雇用労働者の場合は、育児休業を開始した日より前2年間に、被保険者期間が12か月以上あること
·有期雇用労働者の場合は、育児休業開始時において、同一の事業主のもとで1年以上雇用が継続されていること。ならびに、子が1歳6ヶ月までの間に労働契約の更新がないと明らかであること
<金額(計算方法)>
取得開始月から6ヶ月までは月給の67%、7~12ヶ月と育休延長時は月給の50%が受給されます。なお、受給金額については支給率67%の場合に305,721円まで、支給率50%の場合には228,150円までの上限が定められています。
<申請方法>
被保険者が事業主に育休取得の希望を伝え、事業主が手続きを行うのが一般的。被保険者本人による手続きを希望する場合は、原則2ヶ月ごとに事業所を管轄するハローワークへ必要書類を提出しましょう。
<申請期日>
初回申請期限は、育休開始日から4ヶ月を経過する日の月末まで(その後は、原則2ヶ月ごとに申請)。ただし、万が一申請が間に合わなかった場合でも、本来の期限日から2年間は申請可能です。
<給付時期>
申請後の支給決定日から約1週間程度
<注意ポイント>
原則は子供が1歳となる日の前日までが支給対象ですが、「保育所などにおける保育の実施が叶わない場合」や「6週間以内に出産予定、または産後8週間を経過しないとき」など、一定の要件を満たした場合は2歳となる日の前日まで受給できる可能性があります。内容や程度によって受給可否が異なるため、延長を希望する場合は必ず問い合わせるようにしましょう。
プラスのサポートを受けられるかも!自治体独自の助成も要チェック
出産手当金や育児休業給付金など、出産前後にはさまざまな補助制度が設けられています。「手出しなしで安心して産めた」という声がある一方で、首都圏を中心に「出産費用が予想以上に高い」「第二子、第三子を考えづらい」という声も耳にします。
近年は出産にかかる金銭的な負担も問題視されており、2022年春には自民党の有志議員で構成される『出産費用等の負担軽減を進める議員連盟』が出産育児一時金の増額を政府に提言すると発表。現在の42万円から3万円ほど増額された、40万円台半ばまでの引き上げを目標に動いています。
そんな中、一部の自治体では独自の助成制度を設けて妊産婦へのサポートを行っています。受給対象のものがないか、住んでいる自治体のホームページをチェックしてみましょう。
東京都港区の出産費用助成(2022年5月現在)
区独自の出産助成金を設けることで、出産費用(分娩費及び入院費など)の助成を42万円から73万円まで拡大。最大助成額は1人の場合31万円、双子で29万円、三つ子で27万円となっています。
例)一人出産して、出産費用が76万円の場合
→出産育児一時金42万円+港区出産費用助成額31万円+自己負担3万円
熊本県産山村の出産祝金(2022年5月現在)
熊本県にある産山村では、新生児健診やオムツ代、ミルク代といった出産に伴う諸費用の負担軽減のために「出産祝金」を支給しています。支給金額は第1子20万円、第2子30万円で、第3子以降は毎月1万円を満5歳になる誕生月まで受け取れます。
もらい損ねを防ぐため、事前にしっかりリサーチしておこう!
新しい命を育むためには、必ず「お金」が必要になります。安心して出産·育児を行えるよう、助成金や補助制度を事前にリサーチしておきましょう。最近では、自治体独自の給付金や助成金なども拡充しています。もらい損ねがないよう、自分の住んでいる自治体の情報もこまめにチェックしていきましょう。
この記事の執筆協力
- 執筆者名
-
山本 杏奈
- 執筆者プロフィール
-
金融機関勤務を経て、フリーライター/編集者に転身。現在は企業パンフレットや商業誌の執筆・編集、採用ページのブランディング、ウェブ媒体のディレクションなど、幅広く担当している。
- 募集文書管理番号