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<インタビュー>大切なのは“褒めたあと”の反応!サッカー元日本代表、玉田圭司さんも実践する「コーチングの極意」
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2021年のシーズンで引退するまで、Jリーグで23年もの長いキャリアを築き上げた玉田圭司(たまだ・けいじ)さん。日本代表としてワールドカップの舞台で戦ったほか、J1では通算366試合に出場し、99ゴールをあげるという輝かしき成績を残しました。全3回にわたり玉田さんの軌跡やマインドに迫ったインタビュー。最終回となる今回は、玉田さんが目指す未来や子どもたちへのサッカー指導を通じた“気付き”などを語っていただきました。
コーチングするうえでなにより大切になるのは、子どもたち一人ひとりに目を向け、“褒めたあと”の反応を見ることだそう。玉田さんのコーチング術は、チームビルディングや職場でのコーチングにも応用できるはずです。
- コラムサマリ
「ずっとサッカーに触れていたい」。23年の現役生活を終えたいま、新たに追いかける夢。
純度100%、まっさらな言葉を投げかける子どもたちから学ぶこと。
「その瞳に夢を宿して」。未来の日本サッカー界を担う子どもたちに伝えたいこと。
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「ずっとサッカーに触れていたい」。23年の現役生活を終えたいま、新たに追いかける夢。
――2021年シーズン限りで引退されて、約1年が経ちました。今後の夢や目標について教えてください。
玉田圭司さん(以下、玉田):やはり、人生の一部であるサッカーに触れ続けていたいです。現在携わっているジュニア向けサッカースクールをはじめ、誰かに伝える立場(=指導者)に興味があります。まだ先の未来の話にはなりますが、ゆくゆくはJリーグの監督として立ちたいという想いもありますし、日本代表や海外チームの監督なども経験できると嬉しいですね。日本が強豪国になるためにも、選手だけでなく指導者も世界に出ていける時代になってほしいです。
純度100%、まっさらな言葉を投げかける子どもたちから学ぶこと。
――ジュニア向けサッカースクールのお話がありましたが、子どもたちとの触れ合いから刺激を得ることも多い?
玉田:子どもって、良い意味でなんにも考えずにまっさらな気持ちを発信するんですよね。大人はどうしても「こんな言い方したらダメかな」「こう伝えたほうがいいかな」と相手を尊重しながら考えを整理してしまいますが、彼らは直感的な言葉を投げかけてくれます。そんな言葉が、大人同士のコミュニケーションにおいてもヒントになるというか。心を開いてコミュニケーションをとるためにも、子どもたちのような“純度100%”の気持ちや言葉を忘れずにいたいなと思います。
――子どもたちと接するうえで意識していることは?
玉田:よく見て、たっぷり褒めてあげることですね。子どもは素直なので、褒めた分だけぐんぐん吸収してくれます。ときには厳しい言葉をかけることもありますが、そんなときこそ「𠮟咤」と「激励」のバランスが大切です。よくよく見ていると素直に受け入れてくれる子もいれば、あまり聞いていない子もいて、伝わり方や解釈の仕方は十人十色。そんなところも、子どもたちに教えるうえでの楽しさのひとつです。自分の指導をきっかけに、その子が少しでも成長してくれたらなによりの喜びですね。
――“褒め上手はコミュニケーション上手”なんて言いますが、ビジネスシーンでは「相手を褒めるのが難しい」という声も。
玉田:明確な理由なく褒めてあげてもいいと思いますよ。大人になっても、褒められるのって嬉しいじゃないですか。ここで大切になるのは、褒めたあとの反応を見ること。サッカーでいえば褒めたときに動きがよくなるタイプと、厳しい言葉をバネにして全力を出すタイプの2種類がいます。
ビジネスシーンにおいても、相手が“ノる”にはどうすればいいのかを考えながら、一人ひとりに合った対応をしてみてください。いずれのタイプであっても、「見ていること(気にしていること)」を伝えるだけで相手のモチベーションアップに繋がるはずです。「その瞳に夢を宿して」。未来の日本サッカー界を担う子どもたちに伝えたいこと。
――子どもたちの能力を伸ばすために心掛けていることは?
玉田:人前でプレーすることへの緊張感を抱きつつ、それが苦にならない環境づくりは意識しています。なにより、子どもたちがイキイキとした笑顔でサッカーを楽しめる場所で在るように。今はオンラインでなんでもできる時代ですが、リアルでしか体験できないもの、習得できないことも多いものです。サッカースクールに通ったことで目標や夢を見つけてくれれば、なにより嬉しいですね。途中で目標が変わってもいいんです。まずは、小さな瞳を輝かせながら夢を追うことが大切だと思います。
――最後に、子どもたちへのメッセージをお願いします。
玉田:サッカーを通じて、サッカーのスキルだけでなく「人間力」も身に付けてほしいと願っています。人間力というと強さのように聞こえますが、生きていくうえでは“謙虚さ”も大切です。誰かの言葉に耳を傾けられる人、そして聞いたことを自分で判断したり咀嚼したりできる人になってほしいです。そのためにも一人ひとりの個性を伸ばし、これからの人生の糧となる「芯」を持てるような場所を作っていきたいと考えています。サッカーを通じた出会いやコミュニケーションに心をときめかせながら、一緒に、そしてひたむきにボールを追いかけていきましょう。
取材/佐々木悠
構成・文/山本杏奈
写真/竹田靖弘
この記事の執筆協力
- 執筆者名
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玉田圭司
- 執筆者プロフィール
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1980年4月11日生まれ。身長173cm。ポジションFW。習志野高校を卒業後、柏レイソル(1999-2005)に入団。名古屋グランパス(2006-2014)、セレッソ大阪(2015-2016)、名古屋グランパス (2017-2018) 、V・ファーレン長崎 (2019-2021)にてプレーし、2021シーズンに引退。現在は Vファーレン長崎アンバサダー兼アカデミーロールモデルコーチを務めるほか、サッカー解説など多方面に活躍する。
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